岡山県立勝間田高等学校文化祭「清風祭」作品

★創立100周年〜Street〜★

 創立100周年を迎えた勝間田高校では記念制作としてモザイク壁画を学校祭で披露しました。1923年に建てられた旧校舎(現校友会館)を元画像にして、「Street〜今振り返る100年の道 そしてこれからの道標〜」をメッセージを加えた100周年にふさわしい作品となりました。

《創立100周年記念 全校制作の取り組み》
【全校生徒の参加で何かしたい!】
 創立100周年を迎える今年、生徒が参加して何か大きなことができないだろうかと生徒会執行部を中心に考えていました。はじめは広大な演習林を持つ本校の特色を出すため木材を使ったものも考えましたが、全校で取り組むにはあまりにも重たい。思案を重ねていくうちにインターネットで見つけたのがこのモザイク壁画でした。

【実行委員会の立ち上げ】
 まず考えたことは、どうせやるならこのことをきっかけに学校行事を活性化したい、ということでした。生徒の持っているエネルギーを発揮させるチャンスを与えたいと考え、今年は清風祭(本校の学校祭)実行委員会を立ち上げました。生徒会執行部はもちろん農業クラブ役員、さらに全校から呼びかけに応じた生徒、合計31名で学校祭の企画づくりからはじめました。
 6月19日、第1回の実行委員会を開き、総務・清風祭体育の部・文化ふれあい祭・広報の4つのパートに分かれました。ここで今年の目玉企画として『全校制作によるモザイク壁画』が提案されました。そしておもに総務パートを中心に準備を進めていくことになりました。
 7月には全校アンケートをもとに今年の学校祭のテーマは『Street〜今振り返る100年の道 そしてこれからの道標』と決まりました。勝間田高校の歩んできた100年の歴史の重みを感じようという思いを込めたものです。

【準備開始】
 つぎはモザイク壁画の題材となる絵を選びました。やはり100周年ということで勝間田高校の歴史を感じさせるものがよいということで、現在校友会館となっている旧校舎に決定しました。
 写真をコンピュータに取り込んで、サイズ調整・文字の挿入などの加工をおこない、減色作業に取りかかりました。
 そして設計図にクラスごとの割り振り範囲を書き込みました。このとき縦の列を1列・2列…と数字を割り当て、横の行をA行・B行…とアルファベットを記入していきました。漢字の数を数えながらおこなう地道な作業でしたが2人で2時間程度でできました。
つぎにB4の上質紙に2.5o四方のマスを記入し、輪転機で印刷しました。その用紙にソフトを使って、貼るべき色を表した漢字を印刷していきます。1300枚あまりの用紙の印刷でしたのでプリンタ2台がフル稼働しました。できあがったものから裏面に「A1」・「M26」などというように番地をすべてに記入しました。そしてクラス割り当て分をそれぞれまとめて箱に入れていきました。この作業は休日返上で、3人がかりで5時間ほどかかりました。
 色紙の発注は、東京の創作専科という会社に注文しました。多くの学校では色紙を学校の裁断機や生徒がはさみでカットしながら作業をしているようですが、作業能率などを考えてあらかじめカットされたものを注文しました。ただし費用は割高になり、色紙代で4万円強かかりました。
 あと必要なものは、作業に関わるのりやテープです。のりはホームセンターで洗濯のり(おかめのり90円×10個=約2s)を買い込み、ぬるま湯で2倍程度に薄めて使いました。各クラスにはペットボトルに入れて配分しました。
 作業をうまく進めるためにのりを塗る筆を用意しました。百均ショップで5本一組のものを購入しました。当初はクラスに5本と考えていましたがそれでは足りないだろうという意見があって、前日になってさらに追加購入しました。
 これらの物をクラスごとに段ボール箱に入れて配布したのですが、困ったのが色紙の配分です。クラスに割り当てた設計図の漢字をすべてチェックして枚数を数えて配分するのは到底無理です。ですから設計図をにらみながらおおよその数を配分することにしました。作業の最中色紙の過不足が出ることは当然予想されましたが一斉の作業ですからクラス間で何とか融通が利くだろうと考えました。ところがこれが大問題を引き起こすことになったのです…

【いよいよ全校作業開始!】
 10月30日、クラス代表生徒、クラス担任、そして実行委員生徒を集め全校制作説明会をおこないました。資料だけではなかなかイメージが湧かない様子でしたが、設計図をみると集まった人たちから驚きの声が挙がっていました。次第に作成に向けてムードは高まってきました。
 創立100周年記念式典を無事終えて、11月8日の3、4限の時間に全校一斉の作業に入りました。生徒ごとに割り当てられた2枚の台紙に向かって色紙をのり付けしていきました。あるクラスではにぎやかに、あるクラスでは黙々と作業に取り組みました。

【そして大混乱のはじまり…】
 作業が進むにつれて校内がにぎやかになり始めました。「白をちょうだーい」、「桃色がないぞ−」と先生や生徒が校舎内を行き交います。10色のうち桃色の不足が各クラスで起こりました。割り振られた色紙の過不足が出ることは予想していましたが、こんなに足りないのはどう考えてもおかしい…。実行委員会は応急処置として別の桃色の紙を買ってきて対応しました。予定ならひとり2枚のノルマは2時間あれば充分張り切れるはずでしたが、この不測の事態で放課後に残ってらなければならないクラスも出てきました。
 翌日実行委員の生徒が各クラスの作業済み台紙を確認しているときに見つけてしまいました…。農ク室の棚の上に『桃色』『白』と書かれた色紙の袋を…。おそらく色紙をなどをクラスごとに配分したときに入れ忘れたのだと思います。実行委員の生徒が時間のない中、一生懸命やってのことですからみなさん許してください。

【巨大化作業へ】
 11月10日(土)は学校休業日ですが、実行委員の生徒はこの日から巨大化作業に取りかかりました。設計図の番地と台紙の番地を照らし合わせながらのり付けしていきました。そしてできたものから裏面にPPPテープで補強をしていきます。作業場所の関係から作品を8分の1のサイズまでつなぎ合わせていくことにしました。

【急きょ作戦変更】
 作業の途中、担当の先生が急に不安になってきました。それは夜露対策です。11月に入ってから急に気温が下がり、朝になるとかなり夜露が降りてくるようになりました。計画では文化の部前日からふれあい祭終了までつり上げておくことになっています。すると丸ふた晩かけっぱなしですからかなりの夜露を浴びることが考えられます。紙は水に弱いですから何らかの対策を打たなければなりません。
 ここは困ったときのM先生。早速メールで助言をしていただきました。そして急きょ作戦を変更して、PPPテープを裏面ではなく表面全面に貼ることにしました。そうすることである程度は夜露も防げるし色紙のはがれ落ちも防げます。さらに強度が増しますから風対策にもなるというわけです。
 このためPPPテープを追加購入しました。実行委員の生徒は何としてでもこの作品をいい物にしたいという思いが強く、その思いにおされて会計の先生はお金を出してくれました。

【いよいよクライマックス!】
 巨大化作業に入ってから実行委員の意気はますます高くなってきました。連日7:30には登校して授業前にひと作業、そして放課後から19:00ごろまで作業を続けました。
 台紙1枚だけを見てもなんのことやらわからないものが、次第に絵らしくなってくるのがわかりワクワクしながら作業をすることができました。でもまだまだ机の上に立って見たくらいでは全体像は見えてきません。巨大モザイク壁画は吊り上げてみるまでどうなっているかわからないのです。インターネットで見た他校の作品はまるで本物の写真のように見えます。自分たちの作品もほんとうにそんなふうに見えるのだろうか…。完成への期待とともに少しの不安を持ちながら、でも絶対うまくいく!と信じて作業を続けました。
 そして11月15日の夕方から、8分の1に分けられたパーツを部活の終わった後の体育館に運び込み、最終の接合作業を行いました。微妙なズレを修正しつつ作業は進みついに巨大壁画が姿を現しました。

【吊り上げ作業】
 校内放送をかけて先生方にも集まっていただき吊り上げ作業が開始されました。1棟3階の教室からロープを下ろし、壁画の上部につけた物干し竿にくくりつけました。3階には男子の実行委員と先生とが待機しています。下では女子の実行委員が壁画の下に入って上へ送っていきます。制作リーダーの号令とともにゆっくりと壁画が吊り上げられていきました。そして、ついに勝間田高校の全校生徒による巨大壁画が完成したのです!

【やり遂げた充実感】
 本当にできるのだろうか!? そう思いながらスタートした全校制作でしたが、実行委員の生徒、担当の先生が試行錯誤を繰り返しながら準備し、そして全校生徒が協力して自分の作業分を責任を持ってやり遂げたおかげですばらしい作品が完成しました。特に終盤の生徒の頑張りは予想をはるかにうわまわるものでした。
 勝間田高校の生徒は、普段はダラダラしているところも確かにあるけど本当はもっともっと力を秘めているのだと思いました。この取り組みをきっかけにいろんな学校行事を「自分たちの行事なんだ」という思いで取り組んでいけるようになればすばらしいことだと思います。
 創立100周年という記念の年にふさわしい取り組みができたと自負しています。



作品データ

2001年11月17・18日発表
岡山県立勝間田高等学校生徒会
モザイク壁画
520×300(ピクセル)×10(色)